住宅省エネルギー性能証明書と住宅性能証明書の違い(続き)
更新日:2023年1月8日
既にほぼ同じタイトルの記事を書いたところ、できたてのこのサイトにしては、アクセスが多いので、もう少し触れてみようと思います。
それほど上位に表示されるサイトでもないのに、わざわざ読んでいただけるということは、それなりのニーズがあってのことでしょう。
そこで、なぜこの記事が探されているかと考えてみると「住宅省エネルギー性能証明書」の検索をしているのに、「住宅性能証明書」の情報ばかりが出てしまうことではないでしょうか。
そうであれば、検索されている方が知りたいのは住宅ローン減税についてであり、贈与税非課税措置のことでは無いだろうと。
前掲の記事では、贈与税非課税措置を受けたい場合に、どう使い分けるのかという視点で説明しましたが、そもそもは住宅ローン減税を受けるだけが目的なら、もっとわかりやすくお伝えしなければなりません。
答えは単純です。
「住宅性能証明書」は、贈与税非課税措置の良質な住宅として、非課税枠を500万円上乗せする際に使える証明書の一つです。
もし、住宅ローン減税をお考えであれば、
「住宅性能証明書」
は全く関係ない書類ですから、そちらをすっ飛ばして
「住宅省エネルギー性能証明書」
のみの記事を読んでみてください。
以上!
そうは言っても、この二種類の証明書は歴史の違いから、掲載記事のボリュームが全く違います。
そうすると、「住宅省エネルギー性能証明書」と検索しているのに、Googleの検索エンジンが関連情報として「住宅性能証明書」を認知し、サイトランクの高いドメイン(性能評価機関など)の記事が上位に表示されてしまうのです。
この区別がつかない一般消費者は、もうよくわからないとして、情報収集をあきらめてしまう方が少なからずいらっしゃるでしょう。
Googleのせいだとも言えないですが、非常に残念でなりません。
さらに説明が続きますが、できれば最後まで目を通してください。
まだ、あきらめないでほしいです。
まず、住宅ローン減税の制度を整理して理解するには、こちらの国交省の説明資料をご覧になることをお勧めします。
※以降新築を前提にお話しますが、既存住宅も省エネの差という点では同じです。
省エネ基準でのピラミッドをイメージしてください。
住宅ローン減税の世界では、長期優良住宅と低炭素住宅が頂点に君臨しています。
それらの制度は、特に聞いていない限り、該当しないと考えて差し支えありません。
(ただし、知り合いのマンション購入者で、たまたま調べたところ、長期優良住宅であるという方がいらっしゃいました。しかし、これは極端な例外です。)
あとは、ZEHか省エネかその他かの3択です。
ZEH水準省エネ住宅は、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上。 省エネ基準適合住宅は、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上。
ZEHも上記の長期優良と同様に、聞いていないのにZEHであったとは、ほぼあり得ない状況です。
なぜなら、通常はZEH基準の住宅を提供していると謳う建設会社に依頼して注文住宅を建てるくらいしか、考えられないからです。
もし、建売やマンションでZEHだとしても、それは広告上の売り文句になるはずです。
省エネ性能のために、敢えて通常以上の高コストの断熱設備を採用したのでしたら、お客様に訴求しないわけがありません。
残りは、省エネ基準適合住宅に適合するのかどうか。これが、かなり厄介な曲者です。
もはや、省エネ基準は2025年の義務化を控えている、新築では普及レベルの基準です。
小規模な注文住宅でも、説明義務制度の網がかかり、設計者から説明を受けるはず。
あなたは「暖かくて快適な、体に負担の少ない家を希望しますか。」と聞かれて、「いいえ。寒くてもデザインにお金をかけてください。」 とは答えないでしょう。
だいたい、まともに省エネ住宅によるメリットを説明すれば、「省エネ基準に適合する住宅をお願いします。」と答えるのが普通です。
ボトムアップが進み、そんなに厳しい基準とも言えなくなってきた結果、国交省の推計では既に供給される新築住宅の7割以上が省エネ基準を満たすとしています。
ところが、「住宅省エネルギー性能証明書」となると話は別です。
注意していただきたいこと、それは
省エネ基準適合住宅 ≠ 住宅省エネルギー性能証明書の発行
という事実。
理由を簡単にまとめます。
2022年入居分からの仕組みであるにも関わらず、証明書式の決定が3月末である。つまり、決定前に引き渡されている住宅が存在する。
2021年以前に着工し、建築中や完成済みで2022年の入居を迎えた住宅が相当数ある。
制度ができたからといって、証明書発行の周知はまた別の話である。
これらの状況により、一体どれだけが「住宅省エネルギー性能証明書」を発行してもらえているでしょうか。
性能を満たしている住宅だからといって、証明書が発行されているとは限らないのです。
かんたんに新築を対象に試算をしてみましょう。
新築の年間着工戸数を80万戸とします。
省エネ基準適合が、推計の通り7割だとして、80×70%=56万戸
そのうち、長期優良住宅等で10万戸。さらに建設住宅性能評価書の発行分で長期優良等の重複分を省き、省エネ基準に適合するのが10万戸。
また、残る住宅のうちでも、ローンを組まなかったり、マンションなどで2021年の契約である「特別特例取得」もあるでしょうから、適当に16万戸マイナスしましょう。
そうすると、だいたい残りの20万戸くらいは、ローンを組んで「住宅省エネルギー性能証明書」が必要な住宅と予想します。
ここからはさらに無理やりですが、これからどんなに周知されたとしても50%程度しか証明書は発行されないでしょう。
つまり、今年度だけでも10万戸くらいは、制度のことを知らずに確定申告をしてしまうと予想します。
少なく見積もって、平均20万円程度の証明書によるメリットがあるとすれば、
10万×20万=200億円
これ、利用しなければ、減税しなくていい分です。かなり適当な規模の推計ですけど、大雑把に捉えれば、数百億円規模の話となります。こんなの国が細かく周知するわけないですよね。
ちゃんと制度を作りました。省エネを推進しています。
そう言っていればいいわけです。
要するに、調べる人しか得をしない。そういう仕組みなんです。
もう、数が大雑把すぎて何だか説得力がありませんが、だいたい桁くらいは合っているでしょう。大きな船を作ったので、乗りたい人は来てくださいというくらいのイメージです。
だけど、アンテナを張っていない人は、損したことに全く気づきません。
住宅ローン減税なんて、こんなものですよ。
誰もわざわざ教えに来てはくれません。
ちなみに、ZEHはわかるはずと上記で記載しましたが、ZEHの性能があっても、やはり「住宅省エネルギー性能証明書」を発行するかどうかは別問題ですので、あしからず。
少し違うエピソードですが、長期優良住宅や買取再販の登録免許税軽減制度も、あまり使われていないと国交省が明かしています。
制度があるのと、使われるかどうかは全く別です。
得する情報には、自らアプローチしないといけないという典型例です。
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