RC造の線熱貫流率の適用
更新日:5 日前
線熱貫流率などのより専門的傾向の強い情報については、消費者は知る必要が無いものと思われますが、ブログでそれなりにアクセスがあるため、追加の情報をお伝えいたします。
鉄筋コンクリート造について、外皮の省エネルギー計算(ほぼ断熱等性能等級のこと)を行う場合、線熱貫流率への対応が理解を妨げる関門となっています。線熱貫流率のわかりにくい理由の一つは、たくさんある組み合わせの中からどの形状が対象に適しているのか、判断が難しいことです。
そこで、一部ではありますが、この計算の参考となる情報を提供させていただきます。
まず、線熱貫流率の元となる情報はどこなのか。
建築研究所の資料
第三節 熱貫流率及び線熱貫流率
こちらが、計算の根拠となっています。
住宅の基礎形状などによる計算方法などの変更がたまに行われていますが、鉄筋コンクリートの線熱貫流率は、
付録 C 鉄筋コンクリート造等住宅の熱橋形状等に応じた線熱貫流率
に記載があります。
こちらには表1と表2があって、よく皆様(計算マニュアルなど)が見ているのは表2の方ばかり。でも、説明書きを読むと _____ 鉄筋コンクリート造等における熱橋の線熱貫流率は、・・・表1で定める値を用いることができる。加えて、当面の間、表2の・・・値も用いることができる。 表2って、補足的なルールになったのご存知でした? さらに、この当面の間というのが、 _____ ※ここで当面の間とは、2023年3月31日までの期間を想定している。 というのですから、もはや期限切れのはずだったのが Ver.20 2023.04 において、 _____ ※ここで当面の間とは・・・
部分が削除され、
具体的な期日を先送りする判断をされたようです。
それで、このダブルスタンダードがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのかという解釈をすると、
2022年4月に Ver.18を公開し、1年の経過措置のうえシンプルな表1に移行しようとした。
しかし、結果的に周知が十分とはならなかったため、表2がまだしばらく有効なままとなっている。
表1は、柱梁がどこに突出するのか関係なく、単純に線熱貫流率を示している。そのために、表2で表現された多くのタイプが表1の結果に集約された。
これにより、いつ完全移行するかによって賞味期限があるのですが、当面のテクニックとして、表1と表2の都合のよい部分を活用するという姑息な手段が考えられるのです。
細かいところまでは説明を省略しますが、
表2において、線熱貫流率の「断熱補強なし」欄がおおむね2を超える断熱形式については、表1の数値の方がより有利になります。
上記の線熱貫流率「断熱補強なし」欄が1近辺以下の場合は、表1の数値が厳しくなるケースが多いので、そのまま表2を用いた方が、有利な数値となります。
例えばとして、 ラーメン構造等で柱、梁等が熱的境界の外部に存する 内・外断熱(室内1、外気3) の例を掲示します。
この形式は、最下階等で階下の空調が無い場合に使われますが、最上段の数値が今後も「表1」で使用される代表的な値となります。 2段目は、結構厳しい値ですが、断熱補強なし欄が2.55ですから、これは「表1」の1.40を使った方が有利だとわかります。 一方、3段目と4段目は、1段目よりも良い数値になっているので、このまま「表2」の方が有利です。 より具体的なイメージをお伝えすると、 地下ピット天井の梁に巻き込むように断熱材が無かったとか、補強レベルしか施されてないとしても、少なくとも1.40にできるということ。 一方で、バルコニー側などの梁が外部に出ている場合は、そのままの「表2」の数値を用いて、0.7などとした方が、計算上の性能は良くなります。 なお、これらは計算上のテクニックであり、実際の建物の性能が向上するわけではありませんから、本質的ではないとのご意見もあろうかと思います。 しかしながら、今後ギリギリで基準クリアを目指さなくてはならない設計者にとっては、ぜひとも「表2」の廃止を先延ばしにしていただきたいという考えになるのも無理はありません。 経験上、妻住戸の最下階というのは、省エネルギー計算に際してかなり厳しい条件となることが多いです。 そのため、弊社としても、このようなやや姑息ではあるものの、きちんと認められた手段をやりくりしながら、基準達成の可能性を探っております。
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