RC造の断熱補強について
更新日:2023年8月31日
外皮の熱損失の計算について、木造住宅は軸組等の断熱材が入らない熱橋部分を別に計算をして、断熱材部分との構成比で按分の計算を行います。
それに対して、マンション等の鉄筋コンクリート造については、外皮等の構成が一律であるとしますが、線熱貫流率の計算をして、熱橋の熱損失を加算します。
鉄筋コンクリートの熱伝導率がそこそこ高いので、断熱材で被覆しない部分の熱損失もきちんと考慮するという意図によるものです。
そのために、建築研究所では下記のレポートを用いて、線熱貫流率の値を算定し公開しています。
(P27あたりからです)
更新によりリンク切れになった場合は、とりあえずこちらより第三節を探してください。
https://www.kenken.go.jp/becc/house.html
我々は、これらの計算の過程を理解できなくても、優秀な専門家の叡智を利用することができますから、たいへんありがたいものです。
内断熱外断熱等の組み合わせから、該当となるパターンを選び、断熱補強の有無と補強仕様から、線熱貫流率の数値を読み取ります。
ここに表示されている断熱形式は、たくさんパターンがあるのですが、まずはここでは触れないでおきます。
さて、気になったのが、右欄に記載されている断熱補強仕様1と断熱補強仕様2です。
この分野についての経験が長い方は、常識というレベルのお話かもしれないですが、少しだけ聞きかじったことをお伝えいたします。
(これらの分野について当然専門の方々がいらっしゃるものですから、ここでの記述はたいへん薄っぺらいものです。)
前述のとおり、鉄筋コンクリートはよく熱を通しますので、住宅の居住性を高めるために、外気との熱の出入りを遮断する必要があります。
そのために、壁の内側に断熱材を施工することが一般的です。ついでに屋上と床下は、たいてい壁の外側に断熱材を施工します。
外断熱と内断熱の是非は、とりあえず置いておいて、建物には廊下やバルコニーなどの外部にさらされる鉄筋コンクリート部分が構造として一体となっていますから、それらを含めた熱の出入りを遮断することを考えるわけです。
ちなみに、古いRC造の建物ではこのような対策があまりされていませんから、外気で冷やされた構造体に結露がびっしり、熱放射による底冷えが起きたり、夏は夜になっても熱がこもるということが起こります。
そこで、断熱材を外皮面に覆いつくすのですが、構造体からの熱の伝達をより少なくするために、追加で断熱材を施工する部分を断熱補強と表現しています。
その方法が2パターンあるというのです。
断熱補強仕様1とは
建築物省エネ法の法令サイト
より
住宅部分の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準(平成28年国土交通省告示第266号)
P12から
こちらに断熱補強仕様1の内容が記載されています。
表題からは何の基準だか判断がつかないですが、これは仕様基準のルールです。
つまり、仕様基準の場合には、この断熱補強をするという約束になります。
太平洋側都市部を含む温暖地の5.6.7地域であれば、45cmが断熱補強の範囲、熱抵抗値Rは0.6。
断熱補強仕様2とは
断熱補強仕様2とは、こちらの内容になります。
断熱補強仕様1と同様に、太平洋側都市部等の5.6.7地域であれば、12.5cmが断熱補強の範囲、Rは0.1。
この基準は、以前使われていた基準で、今はないとのこと。
住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針(平成21年版)
こちらに、多少近い基準が残っていますが、いつまであったのか、突き止められませんでした。
仕様1と2を比較すると、仕様1が厳しい基準であることがわかります。
どう使われているか
まず、仕様基準というのは、実際にはほとんど使われていないと予想いたします。
仕様基準は、詳細の計算をしませんので、性能基準より断熱性能がオーバースペックになります。
いくら計算の作業量大といっても、建築コストのアップほどにはならないので、自ずと標準計算(性能基準)が選ばれるのです。
ちなみに、直近のマンションでは、断熱補強仕様2が一般的に行われており、角住戸などの熱損失の多い住戸については、補強仕様1などが対策として選ばれることがあります。
それで、何でこの仕様1と仕様2が性能基準の住宅なのに用いられているのかをいろいろと調べたのですが、ただ単に、建築研究所が仕様1と仕様2の線熱貫流率を示しているからというだけの理由のようでした。
たいへんつまらないオチですが、既にある計算データを利用しますということのようです。
この仕様1仕様2ではイヤだという方は、線熱還流率の値を計算で求めて、有識者の確認を取り、評価機関に根拠資料と共に示すのでしょうか。
はっきり言って、そんなの持ち込まれても、正しいかどうかわからないですから、迷惑でしょうね。
なお、スラブの上下に断熱補強をするため、直床では段差が生じてしまいますので、採用が難しくなります。そのため、スラブの高さを微妙に変えたりという現場の工夫もあるようです。
それから、この断熱補強はコンクリート壁の両面から行うことが前提なので、一戸単体のリノベでは計算に入れられないんです。
反対側の住戸が補強できていなくても、リノベ住戸側だけで認めてくれても良いのではないかなぁとは個人的には思います。
そのうち、できたら実際の断熱補強の例を取りあげてみましょう。
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