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神戸市補助制度ミセリノベのねらい

  • 執筆者の写真: show3管理者
    show3管理者
  • 6月16日
  • 読了時間: 4分

更新日:6月18日

神戸市が2025年度に新設した中古住宅リノベ向け補助「ミセリノベ」。

買取再販事業者だけを対象に、断熱等級5以上の確保を要件化し、さらに完成後は必ず見学会を開くというユニークな仕組みです。

単に工事費を助成するのではなく、「断熱改修のリアルな効果」を消費者に見せることで、リノベ市場全体の底上げを狙うこのモデル。

ここでは、制度の中身と狙いを、各項目ごとに解説します。





1. 「ミセリノベ」の主な要件




マンション買取再販事業者限定



神戸市の「ミセリノベ」は、あくまで“マンションを仕入れて再販する”事業者向けの制度です。個人オーナーが自宅を改修するケースは対象外。

戸建住宅も対象外です。


背景には、内装や水回りのみの設備交換が優先され、なかなか目に届かない建物の性能にまで消費者の興味が向かないという課題があり、買取再販業者に、断熱改修の広告塔の役割まで担ってもらう狙いがあります。

この結果として市内全体の住宅ストックの温熱環境が底上げされることを期待しています。



工事費に対する補助ではない



補助対象となるのは、なんと見学会の開催経費と省エネラベルの発行経費のみ。

よくある断熱の割増工事費に対する補助ではありません。


この制度による補助とは別に、内窓工事や、外壁等の付加断熱工事を実施し、結果として断熱等性能等級5以上の省エネラベルを取得しなければなりません。


一次エネルギー消費量計算(給湯や冷暖房機器などまで含む)までは求めず、「断熱性能を上げること」に要件を絞っているのも特徴。これにより、設備の交換費用の追加負担を気にせずに、断熱改修に注力できます。



見学会の実施義務



最も目を引くのが“見学会必須”のルール。2回以上工事途中の見学会を実施し、また、竣工後も10日以上の開催を義務付けて、一般消費者が実際に断熱リノベ後の住まいを体感できる場を設けることが要件です。



  • リアルな温度差(冬場の室内外温度比較など)

  • 断熱材の納まりや施工方法

  • 高断熱サッシの開閉感や結露防止効果


    …こうしたリアルな情報を、住まい手自身が実際の物件で体験できるのは、理解を深めるうえで非常に効果的。単なるチラシやウェブ説明では伝わりにくい“住み心地”をリアルに伝播させることで、一般の消費者に向けて、断熱改修検討の後押しが期待できます。



補助額


  • 補助上限:約100万円/戸


実際には、このような断熱リノベをしても、強くアピールせずに、また購入希望者が現れたら、その後の見学会はしないことが多くあります。

また、仕上げ材で覆われてしまうと見た目はほとんど変わらず、アピールがしにくい状況となっていました。


複数回の見学会を通じた情報発信によって、次の購入希望者へ効果的に「断熱リノベの良さ」をアピールする機会を強制的に確保しています。




2.制度設計の狙い




消費者側の興味を高める



断熱リノベの具体的な効果を見学会で体感できると、映像では表現できない、より具体的なイメージについて理解が進み、必要性を強く認識。購入や改修の要素として、きちんと組み込まれ、ストックの質の向上につながります。



断熱建材の補助制度の併用


断熱改修をするなら、先進的窓リノベを中心とした2025省エネ補助金の併用を考えましょう。


  • 各制度の「申請時期」「完了報告」「必要書類」を確認。

  • 事前にガントチャートなどでスケジュール管理を行い、同時申請・同時工事がスムーズに進む体制を整えましょう。




情報発信要件を制度化する意義



多くの補助制度は「おカネを渡して終わり」になりがちですが、ミセリノベは“見せること”自体を要件に組み込むことで、一個人の発注による閉じられた世界でのリフォームにとどまらず、さらに形を変えた広告効果を狙っています。

見学会で得られた写真や参加者の声をウェブやSNSで拡散すれば、広告費ゼロで消費者への訴求が拡大します。



断熱等級5という絶妙な設定



断熱等級4は、そんなに難しくない。

だけど、省エネ計算はしなければならない。


せっかくなら、ZEH水準を見据えた、ちょっと背伸びしなければ届かない断熱等級5に、要件を据えたところがいかにも絶妙です。


一次エネルギー消費量計算や空調・給湯機器の更新要件がないため、設計・申請書類は断熱仕様に関する部分だけ。ただし、省エネラベルを第三者機関に発行してもらう必要があります。




まとめ


「ミセリノベ」は、買取再販事業者向けに断熱等級5以上を保証し、見学会で消費者理解を深める革新的モデルの取り組み。


断熱性能そのものの魅力をストレートに“見せる感じる”ことで、市場全体のリノベ意欲を喚起します。

各種の支援制度と上手に組み合わせれば、補助総額を高めつつ、見学会を武器に消費者にリアルな体験を提供可能です。


また、各自治体の行政担当者に対しては、単なる断熱補助だけでなく、断熱改修の「見せる化」にまで踏み込む点を、参考にしていただいてはいかがでしょうか。


もし、神戸市内のリノベを予定していらっしゃる買取再販の業者様がいらっしゃいましたら、お声がけいただけたらと思います。

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