top of page

建設住宅性能評価書は、既存住宅の税制優遇にほとんど使えない?その理由と注意点

  • 執筆者の写真: show3管理者
    show3管理者
  • 6月22日
  • 読了時間: 4分

中古住宅購入時に「住宅ローン控除の上乗せ措置」を狙うなら、以下のいずれかの書類が必要です。


  • 建設住宅性能評価書

  • 住宅省エネルギー性能証明書



しかし、実際には「建設住宅性能評価書」は活用できるケースが非常に限定的です。その理由を、制度変更の歴史も踏まえて解説します。





1. 制度の歴史と評価書の限界



中古住宅に関して「建設住宅性能評価書」が税制優遇に使えるかどうかは、評価書が作られた時期(制度改定のタイミング)によって大きく異なります。以下に制度の変遷を時系列で整理します。





● 2000年(平成12年):「住宅の品質の確保の促進等に関する法律」の制定による、住宅性能表示制度の開始



住宅の性能を数値で可視化するために、「住宅性能表示制度」がスタート。評価項目の一つとして温熱環境について「省エネルギー対策等級」が設けられました。





● 2013年(平成25年):評価項目の構成変更(表示様式の変更)



この年に「省エネルギー対策等級」が、次の2つの等級に細分化されました:


  • 断熱等性能等級

  • 一次エネルギー消費量等級



👉 ポイント:

この時点では、どちらか一方の評価だけでも建設住宅性能評価書を発行可能とされていました。特に、一次エネルギー消費量等級を省略し、断熱等性能等級しか書かれていない評価書が多く存在します。





● 2016年(平成28年):省エネルギー基準の法制化



いわゆる「平成28年省エネ基準」が導入され、次の内容が明確に位置づけられました:


  • 断熱等級4以上と一次エネ等級4以上で「省エネ基準を満たす住宅」とされる

  • ただし、住宅性能評価においては、引き続き温熱環境はどちらか一つが必須として選択扱いのまま



👉 ポイント:

制度上は両等級が重要と認識され始めたものの、現場では依然として「断熱等級だけ評価する物件」が多数。したがって、平成28年以降の評価書でも、片方(断熱等級)しか記載されていないケースが多いのが実情です。


なお、マンションについては、この住宅性能表示制度とは別に、省エネ性能の届出制度や各都道府県の環境性能表示などにより、実際には一次エネルギー消費量まで計算済みであることが、ほとんどのようです。



● 2022年(令和4年):等級の再編・高性能基準の導入



地球温暖化対策の施策として、以下のように温熱環境の指標について厳格化が進みました:


  • 断熱等級5〜7、一次エネ等級6が創設され、より高性能な住宅の可視化が可能に

  • 建設住宅性能評価書においても、断熱等級と一次エネ等級の「両方」の評価が必須項目となる

  • このタイミング以降の評価書であれば、両等級が揃っている前提で運用されている



2. 実務上の注意点




✅ 築2年以内の評価書であること



発行から2年以内の建設住宅性能評価書でなければ、税制優遇には使えません。



✅ 「両等級」が評価されていること



以下のすべてを満たす必要があります:


  • 断熱等性能等級4以上

  • 一次エネルギー消費量等級4以上



過去には、断熱性能のみ評価されるケースが多数ありました。一次エネ評価がない評価書ではローン控除に使えません。



✅ 評価書が新基準に沿っていること



  • 2013年以前の評価書は、旧「省エネ対策等級」のみで構成されており、両等級の記載がありません。

  • 2016年~2021年は断熱等級4以上が最高とされましたが、一次エネ等級の記載は任意でした。

  • 2022年以降に確認申請等を始めた物件は、両等級が性能評価書に含まれるようになっています。






3. 一部の事例で利用可能なケース



稀に、以下の条件をすべて満たす建物であれば、評価書をそのまま使って住宅省エネ性能証明書を取得できます:



  1. 断熱等性能等級4以上

  2. 一次エネルギー消費量等級4以上

  3. 現在の住宅性能が新築時から劣化していないことが確認できる



この条件を満たせば、改めての省エネ計算の作業が不要で、そのまま住宅省エネルギー性能証明書の発行が可能です。

そのため弊社では、マンションであれば通常66,000円のところ、33,000円の軽減価格でご提供します。




4.建設住宅性能評価書の意義と誤解



  • 要件を満たさない建設住宅性能評価書が、全く価値がないということではありません。

    新築時の、性能評価機関が行なった客観的評価として参考になり、現地調査の代替手段としても有用です。


  • ただし、「建設住宅性能評価書=必ず税制優遇が受けられる」わけではないという理解が必須です。






5. 結論:正しく理解して活用を


建設住宅性能評価書のポイント

✅ 築2年以内なら有効

発行日から2年以内であること

✅ 両等級が評価済

断熱等級4以上 + 一次エネ等級4以上

✅ 制度改定状況

2013年、2016年、2022年の改定あり

これらの条件を満たさない評価書をそのまま提出して

「税務署で却下となり→証明書を別途取得」

ならまだ良いのですが、

「なんだ、この書類ではダメなんだ」

と諦めている方がとても多い可能性があります。




ご不明な点や住宅省エネルギー性能証明書発行に関するご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。

Comments


  • Instagram
bottom of page