なぜ省エネ基準不適合のマンションに基準を満たす住戸があるのか
更新日:2022年12月23日
新築住宅では、2025年4月の建築確認より、省エネ基準への適合が義務となります。
また、2024年入居から省エネ基準を満たさないと、新築住宅は住宅ローン減税を受けられませんから、実質的には、その時点で義務となったようなものです。
現在はその手前ではありますが、2022年引渡しの住宅から、省エネ基準を満たすかどうかで、住宅ローン減税の算定額に1,000万円の差が設けられました。
住宅ローン控除額の差は最大で91万円にも及ぶ一方で、基準適合までの追加の費用は一般的にはそこまでにはならないですから、トータルの購入コストで見れば、もはや省エネ基準の住宅を供給しない理由はありません。
ところが、今供給されている新築住宅の中には、住宅ローン減税における省エネ基準を満たさないものが多く存在しています。
戸建住宅は工期が短いので、その気になれば一気に省エネ基準適合へとシフトが可能と思われますから、要はやる気の問題です。解決が難しいのはマンションの方でしょう。
数年の工期に及ぶために、急に仕様を変えるというのが難しく、しばらくは省エネ基準に満たない住宅が生まれ続けます。
既にお伝えしているように、こうしたマンションの中には、実は省エネ基準を満たす住戸が相当数含まれている可能性が高いです。
マンションの省エネ性能は、住棟全体で検討されていて、確認申請の際に届出を行います。
そのため、不適合とされたマンションの中には、下記図の真ん中のイメージのように、角住戸以外は適合しているという例が多いのです。
よって、省エネ基準不適合とされたマンションのうち半数程度は、実際に住戸単位で計算すると適合しているのですが、所有者の方は、そのような説明を受けていないので、気がつくきっかけがありません。
タイトルの疑問に対する答えは、
「最終的な単位は住戸であるにもかかわらず、住棟でしか適合かどうかを判定していないから。」
ということです。
国交省の資料でも、図のとおり不適合マンションに適合住戸が多く含まれているイメージ図を描いています。
ここまで状況を把握しておきながら、そのアナウンスをしないというのは、権利を行使できる方々への情報提供を怠っているという点で、かなり問題だろうと思います。
一方で住宅供給側に、たまに説明する機会があるのですが、皆口を揃えて「知らなかった、気がつかなかった」と言われますが、こちらは本音であろうと確信します。
そして、今後の販売住戸については関心があるものの、引渡し済みの住戸への対応は取引が終わっているので、関与しないという姿勢です。
今後の販売住戸についても、省エネ計算の結果によって、残酷なまでに白黒がつき、むしろ高額な角住戸を中心に省エネ不適合となる事実は、販売現場では混乱のもとでしょう。
もはや、無かったこととして済ませようとする意向のように感じます。
買主が自己責任で調べれば良いと言っても、宅建業者ですら気が付かないことを、自分の問題として捉えられる方がどれだけいるのか。
このような状況によって、省エネ基準に適合していることに気づかないまま確定申告手続きをされる方が多くいらっしゃるのでしょう。
ただし、このような状況を生んだのは、個々の消費者による住宅購買思考の結果でもあります。
今でさえ、省エネ基準に適合しているかどうかは、選択要素として上位に位置付けられておらず、広告から省エネ性能を読み取ろうとしても、ほとんど記述がありません。
極論をすれば、省エネ性能を期待して住宅を選んだのではないので、省エネ性能の証明書など関心が無くても当然と言えるでしょう。
もしかして自分の家のことかもと気づいた方。ご相談レベルでは無料ですから、ぜひお気軽にお声掛けください。
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