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既存住宅の引渡し後工事を認めない問題と政策提言

更新日:2022年12月27日

既存住宅についても、省エネ性能によって住宅ローン減税に差を設けていますし、贈与税の非課税措置の「良質な住宅」も同様です。

要するに、省エネ基準適合住宅は優遇されるということです。



ところで、購入しようとしている住宅が省エネ基準を満たしていない場合、どうしたらよいのか。


下記の資料では戸建住宅を前提としていますが、改修に相当の費用をかけないと基準を満たさないと書いてあります。

231万円かけて、それでも省エネ基準までにしかならないというのであれば、あまり積極的にやろうという方は多くないでしょう。


※戸建の断熱改修を効果的に行うには、気流止めを優先するなどのコツがあるようです。

ところが既にご案内のとおり、マンションの一部の住戸ではバルコニー側の掃き出し窓に内窓を設置するほんの数十万円程度で、省エネ基準を満たす場合がありますから、実はマンションにとって省エネ基準はそんなにハードルは高くないのです。


次に、いつ性能向上工事をしたら良いのか。


こちらは

省エネ基準を満たす住宅の購入

に対して優遇するという基準なので、やるとすれば

引渡し前

にするしかないのです。


さて、


下記の引用は、国税庁による住宅ローン減税と贈与の非課税措置を受ける場合の説明です。


そこで、耐震性については

取得の日以後の耐震改修工事でも認められる

ということになっています。


住宅ローン減税

贈与税の非課税措置


しかしながら、省エネ性についてはそのような猶予措置が無いのですから、引渡し前にそのような性能があったということが原則となります。



そうなると、このようなルールでは、現実の商慣行上、なかなか利用がしにくいのです。


買取再販は別として、引渡し前の所有権が移転していない住宅について、売主の承諾を得て、購入予定者のリフォーム工事を先行して進めるというのは、かなり面倒な交渉となります。

とある大手流通業者様へのヒアリングでは「いくら買主にメリットがあっても、そのようなリスクは負わない」との意見でした。



政府としては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、既存住宅のストックについても省エネ改修を進めていかないと目標が達成できないという状況にあるのですから、よりインセンティブを利用しやすい環境を整えていくのが望ましいのではないかと思われます。


やはり期待される施策として、耐震性向上工事と同様に


売買による引渡し直後の省エネ改修による性能向上については、住宅ローン減税でも対象とする。


としていくべきでしょう。

このわずか数か月のズレは、国内の省エネ住宅ストックの積み上げの動きからしたら、ほとんど影響がありません。


どうして、貴重な省エネ性能向上工事の機会であるのに、あと工事を認めてくれないんでしょう。

せっかくあるインセンティブをどうして効果的に使おうとしないんですか。

あと一歩なのにと、言わざるを得ない制度です。


この意見は、個人的なものというより、不動産流通業界全体の声になってほしいと期待します。

ここで言ったところで何か変わるということは無いでしょうが、不動産関連団体の努力によって、いつかこの施策が実現することを願っています。


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