こんなマンションは要注意!省エネ計算で不利になる典型パターン
- show3管理者
- 2月12日
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更新日:5月25日
これまで、おかげさまで数百件の住宅について省エネルギー計算を実施させていただき、それらの経験からこれは厳しいと思う典型例をいくつかご紹介します。
なお、当初から諦めるような1990年台以前のシングルガラスの建物(当然断熱材も薄い仕様)は除外します。
1 電気式床暖房
一時期、オール電化として普及したかもしれない電気式床暖房は、エネルギーの消費量が大きいとして、計算プログラムで判定されるので、結果的に省エネ基準に届かないことが多いです。以下の6にも関係しますが、利用しないという以外に解決の手段がありません。
ただし、基準に届かないことが多いという表現のとおり、その他の性能により電気式床暖房のロスをギリギリでカバーできてしまうこともあります。
2 大きな掃き出し窓が2面以上にある
建物の1面について、バルコニーと大開口の窓を配置することが多いですが、これが2面になったとたんに、かなり不利な状況に追い込まれます。
例えば、マンションの最上階角住戸でルーフバルコニーがあると、掃き出し窓が2面に設置されることがあり、熱損失が大きくなります。
ところで、タワマンの角住戸は2面に大開口窓が配置されることが多いですが、こちらは外壁がALC(軽量気泡コンクリート)であることや断熱材がそこそこの厚みがあるなどの理由により、意外にも、省エネ基準を満たす可能性がかなり高いです。
また、心ある設計者(デベロッパーの指示か?)の場合、熱損失の高い住戸はさらなる断熱対策をしていますから、必ずしもアウトというわけではありません。
ポイントは、そのような詳細の情報が記載された断熱図面を入手できるかどうかです。
3 電気温水器
残念ながら、電気温水器については省エネ基準を満たさないと考えた方が良いです。電気抵抗の発熱で水を温めるというのは、他の方式と比べてたいへん非効率な方法ですので、できればエコキュートへの更新を検討しましょう。

4 階下が外気に面している
1階で下が地面(正確には配管スペースなどの地下ピット)である場合よりも、階下が通路や駐車場、駐輪場などで外気に面している場合の方が、省エネ計算上は不利となります。
不利である分の断熱材の強化がされていれば良いのですが、建築当時にそのような配慮がされているかどうかとなります。新築購入者は断熱の配慮など全く気にしないでしょうから、売る側も余計なコストと考えがちです。
室内側から床の断熱を追加しようとしても、床を全部剥がしたり、さらに嵩上げすると天井高が低くなったりと、かなり困難な選択肢になります。

5 隣接住戸と接する部分が少ない
隣接する部分が少ないと、窓の配置の自由度が増し、独立性の高い住戸として販売時は人気が高くなるものですが、いざ省エネ目線で見ると、熱損失が大きい配置となります。
意外と見落としがちなのはエレベーターです。エレベーターが通る縦の穴は冷暖房をしていないですよね。つまり外気と同様の空間なのです。そうすると、エレベーターの隣接壁も外気に接する壁となり、計算上は不利になります。
住棟が羊羹型で住戸がまとまっているように見えても、実はほぼ4面が外気に面しているという例もあります。

6 床暖房+(エコジョーズもしくはエコキュートではない)給湯設備
水を温めて、管を通して床下に巡らせ、床のコンクリートとフローリングを加熱したのち室温までをコントロールするというのは、直接空気温度を調整するエアコンに比べて暖房効率が落ちるだろうと想像がつきます。エアコンはヒートポンプを用いた熱効率の優等生であり全くエネルギー消費量の競争において勝ち目はありません。
さらにこの循環する水の加熱機器の効率が悪いとなると、深刻な事態となります。
極端な手段としては、床暖リモコンを潰してしまい、操作できないようにしてしまうのであれば、床暖房設備は無いものとして省エネ基準を満たす可能性もあります。もはや生活においてどのような選択を志向するかによるものであり、一概に言えることではありません。
なお、エコジョーズは結露水の排水が問題となり既存のパイプスペースに設置することは困難であると考えてしまいますが、給湯機メーカーがセットで販売する三方弁により、浴室の防水パンへの排水ができる場合がありますので、ぜひ検討してください。

補足
なお、これらの住宅であっても、内窓の設置によりかんたんに省エネ基準を満たすことになる場合もあり、また、いろいろと設備を交換したり、本格的な外皮の断熱補強を要するものがあります。
そのため、上記に当てはまる場合は、ある程度省エネ住宅としては厳しいとの覚悟はしていただく必要があるものの、どうしたらいいかのご相談を別途お受けいたします。
また、省エネ基準はひとつの目安ではありますが、それで快適性が保証されるものではありません。
ローン減税の上乗せは当然の目的ですが、本質は快適で省エネルギーな暮らしができる住宅を増やすことが国の目標です。
もしペアガラスで省エネ基準を満たしたとしても、それだけで安心せずに追加で内窓を設置することをオススメしたいですね。
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