話題となった図書館「まちなかリビング北千里」に行ってみた!
更新日:2022年12月23日
としてニュースになったものですから、いったいどんなものを作ってしまったのかと思って見てきました。
まず、訪問前の一般論として、図書館という明確な目的のある建物については、過去のノウハウが積みあがっているはずで、それらを参考にしていけば、せめて以前よりも良い建物ができるのではないかと考えていました。
その点では、この建物のファサードはいかにも図書館のセオリーとしては外れていると言えますが、建物の名称である「まちなかリビング」というコンセプトから、できるだけ視覚的にも外部に開かれた空間を目指したのだろうと予想できます。
そもそも、児童館と公民館との併設であり、この共用エリアは書庫としての機能はあまり求められていません。
建物の南側は細長いロールブラインドが下がっており、日差しを遮る必要があるのでしょう。
入ると吹き抜けに階段が配置され、とても開放的な空間になっています。
非常に木質感にあふれたデザインです。これは木をふんだんに使った温かみのある建物にしたいという強い目的があったと考えられます。
また、ファサードはともかく、奥は通常の壁に囲まれた建物になっており、そんなに光が入りすぎて困るというデザインではありませんでした。
エントランスアプローチの看板に、わざわざCLTを活用していると書かれていました。
このようなコンセプトや素材の制約がある中で生まれた公共施設だったのだと理解できました。
敢えて批判的に考えると、いろいろな要素を詰め込んだのが、中途半端とか、目的に適していないと評価されてしまう部分かと思いますが、もともと機能をミックスすることが求められていて、その調和を図った結果と言えるのでしょう。
この建物の評価は、最終的には吹田市民が判断していただくことで、まだ使い始めたばかりの段階で、外部からどうこう言っても仕方ないのかなと感じたところです。
ただ、中大規模建築の木造化の試みは歴史が浅く、失敗を防ぐためにできるだけノウハウを集める取り組みが必要だろうと思います。
今は、建築家の造形のターゲットとなっており、さらにCLTが加わることで余計に使い勝手が優先されない建物が生まれる下地があります。
デザインも木質化も決して否定はしませんが、工法すら確立していない状況で奇抜なデザインを試みれば、ひずみが生まれるリスクが高まります。
特に危惧されるのは、できるだけCLTであることを見せようと頑張ってしまうところ。木を大量に使用するのは構わないですが、表しにした木部が劣化していった際にも、今と同じように自然の姿として受け入れてもらえるだろうか。
CLTとして使っているのはほぼ天井軒裏部分のことなのかと予想したのですが、そんなのを探している時点で、見えることを期待している潜在意識があります。
本気で炭素の固定化を考えるなら、見えるかどうかに関係無く構造全体を木質化して、さらには内装も全体を木の柔らかい雰囲気とするべき。
木質化といえば、地球温暖化対策として炭素の固定化が一つの大きな目的のはずですが、この建物の省エネ性能はいかほどのものか。
一部が木骨であるだけで、大半は鉄骨造と鉄筋コンクリート造のようです。
ガラスの大開口部からは、恒久的な熱損失が続きますが、エコな建物を目指しているわけではないということか。
でもそういった理想論は、まだ日本では受け入れる体制も国民の合意も得られていなくて、防火耐火性能の法整備とか、コストなどの面でも、徹底していくのは難しいのでしょう。
ということで、今回のニュースで表面的なことが取り上げられてしまったのは、ちょっとかわいそうな気がしました。
話題になるくらいよくガンバった建築として、見守ることができたらと思います。
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