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マンションでの仕様基準の道が(ほぼ)閉ざされる

更新日:2022年12月10日


これは、ZEH水準の等級を新設した際に決定した内容で、一段階古い改定ですが、施行はつい先ほどでした。

ここで当然のように、


「断熱等性能等級」及び「一次エネルギー消費量等級」両方を評価取得必須項目とする。


と記載されています。


温熱環境についてはこれまで「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」の二つの基準があり、住宅性能表示としては、どちらか一つは必ず選択してくださいというルールでした。


※下記の図は、改正前の古いものです。



平成27年には評価項目について必須/選択項目を見直しましたが、この時は住宅性能表示を普及させるため、主要な項目に必須条件を絞るという意図がありました。


そもそも省エネの基準に一次エネルギー消費量の概念を導入した時点で、外皮から一次エネまでの一連の計算によって省エネ性能が完結するという考え方でしたが、フラット35Sでも、どちらかは基準を満たしてくださいというように、若干ゆるい規則になっていたのです。


これは、フラットを適合させるという目的においては結構ありがたくて、外皮は手を付けなくて基準を満たさなくても、設備でカバーするなどのことがありました。


このような視点とは別に、必須項目にのみ注目すると、それだけをやればいいんだという考えも生まれます。

特にマンションでは、大手を中心に建設住宅性能評価の普及が進みましたが、その動機として仕方なく必須項目のみやらざるを得ないという心理があったことも想像に難くありません。

この結果、外皮だけ基準を満たせばいいやということで、一次エネルギー消費量基準の建設住宅性能評価としての選択をしてこなかった住宅が多くあると聞いています。

(別途、省エネ適判の仕組みにより、ほとんどのマンションで建物全体のエネルギー計算は実施しています。ただし、基準を守ることは義務ではありません。)


ところで、マンションでは比較的床暖房が普及していますが、下記のように床暖房があると仕様基準では一次エネルギー消費量を評価できないという決まりです。

省エネ計算には、いくつかのルートが用意されており、そのうち「仕様基準」は建材等の性能を制約することで、計算を省略する簡便な方法です。



※さらに仕様基準は改定があります。


そこに、一次エネルギー消費量の評価が必須という今回の基準が加わると、


〇建設住宅性能評価では一次エネも必須

〇一次エネルギー消費量の仕様基準では床暖房を評価できない


よって、床暖房を設置する限り、仕様基準をあきらめざるを得ないという結論になります。つまり、きちんと計算をしなければならないということです。



国土交通省と経済産業省が合同で開催する「建築物エネルギー消費性能基準等小委員会」(直近は2022年7月11日)で、この仕様基準について床暖房を組み入れる修正の要望を受けて検討をしましたが、床暖房はエネルギー消費に与える影響が大きいので標準的な計算ルートで対応するようにとの結論となりました。


https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house04_sg_000177.html



別の表現で解説すると、

床暖房を仕様基準に取り入れてしまうと、その代わりとして壁やサッシの断熱性能を上げるなどして、トータルでの性能のバランスをとる必要があるが、そうなると仕様基準が複雑化して、簡便に利用できるという本来の目的から逸脱してしまうため、普通に計算してください。

ということです。

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